気流の鳴る音
元旦。
夫の郷里の鳥取県で過ごした。
そこで初めて、義父が長年かかわってきた農業用水事業のいくつかを、義父自らに案内してもらう機会に恵まれた。
美しい青緑の湖の向こうには真っ白に輝く大山が見え、なんとも清々しい風景。
まるでリゾートの湖のような美しいため池は、実は、その昔、先人たちが自然の谷を利用して作り上げた人口の農業用ため池だ。
そして、一面に広がる田畑は、先人達が、耕しては、開拓してきた土地。
丘を上がって行くと、小さな農業大学校があった。
写真には撮れなかったが、なんだかメルヘンチックな建物で、
宮澤賢治が教員をしていた「花巻農学校」を思い浮かべてしまった。
今回、特に印象に残っているのは、太陽光発電の装置と小規模な水力発電所。
どちらも、地元の方々が作ったものだ。
太陽光発電は、用水路の上に太陽光パネルを設置するというアイデア。
こうすることで、温暖化で上昇してしまった用水路の水温を下げる効果があり、作物が助かる。
また、同時に太陽光パネル自体の温度も下げ、より効果的な発電が可能になるそうだ。
小水力発電所は、戦後間もない頃に、必要に駆られて、地元住民が自分たちで作り出した発電所だ。
ダムに流れ込む水からゴミをとる仕組み。
何度も工夫を重ねて、完成したとのこと。
設備の老朽化が課題だったところ、
東日本大震災後、自然エネルギーが見直される流れの中で、融資や補助金を受けることに成功し、ようやく新しくすることが出来たそうだ。
さらに電力の固定価格買取制度により、今後も経営的にもしばらくは安心していられる。
この発電所の他にも、老朽化で使えなくなりつつある小さな地元の発電所が、鳥取県内だけで、ほかにも10以上あるとのこと。。。
しかし、今、ここへ来て国は、「原子力発電の推進」へ方針転換した。
残されたこれらの小さな水力発電所たちの未来は・・・?
ふと思い出したのは、学生時代に大好きだった宮澤賢治の言葉。
【世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない】
(「農業芸術概論綱要」)
一方で、この国は、どちらへ向かおうとしているのだろう。
いや、国がどうであろうと、私は、私「固有の用」を生きる。
気流の鳴る音を聴きながら。